Career Break Journal

転職サービスなのに、なぜキャリアブレイクを推すのか。WORK for GOOD・山中散歩さんに聞く

転職サービスなのに、なぜキャリアブレイクを推すのか。WORK for GOOD・山中散歩さんに聞く

2024年11月、キャリアブレイク研究所代表理事・北野貴大が登壇したオンラインイベント「働かない期間が『社会を変える』きっかけになる?“社会派キャリアブレイク”のすすめ」が、予想を超える反響を呼んだ。

申込みは263人。WORK for GOODのオンラインイベントとしては過去最多クラスだったという。イベントはその後、ハフポスト日本版のレポート記事にもなった。

仕掛けたのは、社会課題解決に特化した求人サイト「WORK for GOOD」(運営:NPO法人グリーンズ)。モデレーターを務めたのは、生き方編集者としてWORK for GOODの編集も担う山中散歩さんだ。

転職・求人業界にとって、キャリアブレイク——一時的に働くことから離れる期間——は、本来歓迎しづらいテーマのはずだ。早く次の仕事を決めてほしい、ブランクは短いほうがいい。そう考えるのが業界の一般的なロジックだからだ。実際、キャリアブレイクに共感してくれる企業やNPOは増えてきたが、「転職サービス」自らがそれを掲げるのは異例だった。

なぜWORK for GOODは、このテーマに真正面から向き合ったのか。山中さんに聞いた。

転職サービスが言うと、なぜ驚かれるのか

キャリアブレイクを応援する事業者や研究機関は他にもある。しかし、その多くは教育機関やコミュニティ運営者だ。転職・求人という「早く次を決めさせたい」インセンティブを本質的に持つはずの業界のプレイヤーが、あえて「立ち止まること」を肯定する——そのギャップこそが、今回のイベントが多くの人の心をとらえた理由だったのではないか。

キャリアブレイクは、価値観が転換する機会

そもそもなぜWORK for GOODは、PRイベントのテーマに「キャリアブレイク」を選んだのか。山中さんの答えは明快だった。

僕としては、ギャップは全く感じなくて、むしろWORK for GOODとしてキャリアブレイクをテーマにしたイベントを開催するのは自然なことだったんです。

WORK for GOODが目指してきたのは、これまでビジネス領域にどっぷり浸かってきた人が、社会課題解決に関わる仕事へと踏み出す後押しをすることだ。ビジネス領域から、社会課題解決に関わる、いわゆるソーシャル領域へのキャリアチェンジは、「収入を上げていく」「昇進していく」「キャリアアップ」といったキャリアの価値観そのものの転換を伴うことが多い、と山中さんは指摘する。

キャリアブレイクって、その時間を通して価値観が転換される、一つの機会だと思うんです。キャリアブレイクをする人が増えることは、実はソーシャル領域に多くの人が関わるようになることとつながっているんじゃないか——そう思っていましたし、今も思っています。


その実感を裏付けたのが、イベント後のアンケートに書かれていたという、ある参加者の言葉だった。もともとは不動産業に従事していたが、1年以上の無職期間を経て、現在は不登校の子どもを対象にした仕事をしている——。

無職の自分と向き合う期間があったからこそ、そういう仕事をやろうと思えた、と書いてあって。まさにこれだと思ったんですよね。

仕事から距離を取ると、社会が見えてくる

インタビューの中で印象的だったのが、「働き始めることを『社会に出る』というように、仕事をすることが社会の一員であることのように考えられがちだが、キャリアブレイクで仕事から離れるほど、逆に社会のことを考え始める」という一見矛盾した現象についてのやりとりだ。

働いているときって、仕事というものが近すぎて、見えなくなっているものがある。『なんで働いても給料が上がらないんだろう』『なんで育休が取れないんだろう』——そういう、仕事の背景にある社会構造が、少し離れてみることで見えてくるんだと思います。

近すぎると疑問に思えないことも、少し引いてみると「あれ、変だな」と気づく余白が生まれる。それは時間の余白であると同時に、コミュニティの余白でもある、と山中さんは続けた。「寝るのも惜しんで働くのが当たり前」という人たちに囲まれていた人が、「休んでいいじゃん」という人たちのコミュニティに触れることで、初めて「自分がいた環境は当たり前じゃなかったんだ」と気づく——そうした揺らぎが、価値観の転換を後押しするのではないか、という。

「建前でやっていない」という手触り

とはいえ、求人サイトがキャリアブレイクを謳い文句に使うことには、山中さんも違和感があるという。

キャリアブレイクを謳い文句にして、あくまで方便として求人や転職を促そうとしているイベントって、正直、匂いでわかると思うんです。求人サイトがキャリアブレイクのイベントをやると聞けば、そう疑われてもおかしくない。

だからこそ、あのイベントでは一切、求人の紹介や「転職しましょう」といった呼びかけをしなかった、と山中さんは強調する。

純粋に、社会派キャリアブレイクについて伝えたい、みんなと考えたい、という気持ちでやっていました。その、真剣にやっているという感じが、伝わったのかもしれません。

多くの参加者がアンケートに「求職や無職はネガティブなことだと思っていたが、このイベントを通してそうじゃないと分かった」と書き、これまで誰にも語れなかった経験を綴ってくれたという。その率直な反応の背景には、こうした山中さんたちの構えがあったのかもしれない。

一人じゃなくて、一緒に

最後に、キャリアブレイク中の人、あるいはこれから社会課題解決に関わる仕事への転職を考えている人に向けて、メッセージを聞いた。

ビジネス領域からソーシャル領域への転職って、同じ転職でも、国内旅行と海外旅行くらい違うと思うんです。準備するものも違うし、大切にすべきことも違う。大きな価値観の転換が必要かもしれないし、働き方や暮らす場所が変わることもある。

そうした変化の振れ幅が大きいからこそ、求人情報をWebで見て「エントリー」ボタンを押すということが簡単には踏み出せない。実際に現場の人と話す、足を運ぶ、背景にある社会課題をリサーチする——そうしたステップが必要になる、と山中さんは言う。

それを一人でやるのは難しい。だからこそ、一人じゃなくて一緒にやっていけたらいいなと思っています。

WORK for GOODでは、社会課題解決に取り組む企業の現場を訪れる「パーパスワークツアー」や、社会課題解決に取り組む企業と出会える合同説明会なども始めているという。

これはビジネスチャンスがあるからやっているわけではなく、求人サイトという形を通して、社会を良くしていけると信じてやっている。一緒に社会を良くしていきましょう、そのために一緒にキャリアを考えたり、出会いの場に行ったりしましょう、と言えるのがいいなと思っています。

2026年08月22日

PARTNER

求人サイト「WORK for GOOD」

求人サイト「WORK for GOOD」

山中散歩

もの書き、時々もの聞き。ナラティブを軸に、インタビュー・執筆・編集・音声配信・対話の場づくりなどに取り組む。求人サイト「WORK for GOOD」編集ディレクター。著書『風の歌と、人の話を聴け』。『家族を語りほぐす(仮)』、今冬刊行に向けて執筆中。散歩が本業。

WRITER

北野 貴大

北野 貴大

代表理事 / 一般社団法人キャリアブレイク研究所

2014年にJR西日本グループに新卒で入社し、都市開発に従事。妻のキャリアブレイクをきっかけに、キャリアブレイク中の人のための宿「OKAYU HOTEL」を2021年にスタート(現在は奈良で運営中)。退職後、一般社団法人キャリアブレイク研究所を理事2人と共に2022年に設立。2023年より、大阪公立大学大学院経営学研究科付属イノベーティブシティ大阪ラボ特別研究員。

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