Career Break Journal

ライフシフトプラットフォームが支える「ミドルシニア女性がサナギになれる場所」

ライフシフトプラットフォームが支える「ミドルシニア女性がサナギになれる場所」

2026年6月2日、「Life Shift Platform for Women」の第2弾イベント「キャリアブレイクから始まる、私らしいライフシフト」が開催された。一般社団法人キャリアブレイク研究所 代表理事・北野貴大氏によるレクチャーに続き、LSPメンバーの水野和佳氏、延友陽子氏によるクロストークが行われ、企業から集まった21名が耳を傾けた。「Life Shift Platform for Women」プロジェクトにて、このイベントを発案したのは延友陽子氏。在京キー局のアナウンサーとして22年間情報番組、ニュースキャスター、レポーター、ナレーター、イベントMCなどを歴任し、育児のためスポーツ局、人事局、報道局へと異動。2025年6月には休職という選択をした。今まさに彼女自身が「キャリアブレイクの渦中」にいる。イベントの裏側にあった延友氏自身の物語を聞いた。

ライフシフトプラットフォームとは

「ライフシフトプラットフォーム(LSP)」は、ニューホライズンコレクティブ合同会社(電通100%出資)が運営。人生100年時代、年齢を理由に活躍を制限されることなく、自律したプロフェッショナルとして中長期的に価値を発揮し続けられるようサポートすることを目的とし、2026年8月1日時点でメンバーは260名。「LSP for Women」は、その中でもミドル・シニア世代の女性に特化したプロジェクトとして立ち上がった。延友氏は、このLSPの2期生にあたる。

※写真提供はすべて「Life Shift Platform for Women」(写真提供元)

「アナウンサー=延友陽子」だった22年、そして訪れた空白

1998年、延友氏は在京キー局に入社した。お天気レポーターからキャリアをスタート、ニュースキャスター、情報番組MC・レポーターを歴任し、アナウンサーとして走り続けてきた22年間について、彼女はこう振り返る。

これは私の天職だからと、一生を捧げるくらいの想いでした。


しかし、パートナーと別居しながらの育児。ほぼシングルマザーと変わらない状況の中で、これまでの働き方を続けることが難しくなっていく。育児との両立を理由に異動したスポーツ局で担当したのは、数万人規模のゴールデンウィークの大型ゴルフイベント「ワールドレディスチャンピオンシップ」だった。この経験が、彼女に思わぬ発見をもたらす。

アナウンサー経験に加えて、裏方のプロデューサーをやらせていただいたことがとても幸運なことでした。バックヤードで皆さんがどういうふうに動いているのか…。裏で支えてくださるスタッフのおかげで、アナウンサーが前面に出て喋ることができたのです。点が線で繋がったのです。

出演者として「伝える側」だけでなく、企画・運営という「つくる側」の視点を得たことは、後の彼女のキャリアの伏線となっていく。一方でこの時期の延友氏は、自身の状態を「本当にこれからどうなっちゃうんだろう」と表現するほどの空白感の中にもいた。

アナウンサーではなくなってしまった時に、私は誰?と、アイデンティティ喪失に陥りました。

これまで「アナウンサー=延友陽子」という職業アイデンティティで生きてきた彼女にとって、その肩書きが揺らぐことは、存在そのものが揺らぐことに近かった。振り返って、延友氏は当時の状態をこう自己定義する。

ある種これは、キャリアブレイクに近いんですよね、仕事をこなしつつも、私は誰…?どこに行くのか、何者なのかもわからなくなってしまったけれど、とにかく目の前のことを一つ一つ丁寧にやる、こなすしかない状態で…。

会社を離れていなくても、キャリアブレイクは起こりうる。彼女の経験は、そのことを体現している。

2度目のキャリアブレイクと、LSPでの仲間/学び/出番づくり

2019年、アナウンサーという肩書きから離れた最初の転機に続き、2025年6月、彼女は会社そのものから一旦離れる=休職という選択をする。

まさにこれぞキャリアブレイクですね。かれこれ約四半世紀に渡りお世話になってきた組織から、初めて一旦離れてみる、越境学習に挑戦しました。振り返れば、2019年にアナウンス部から離れるという転機があったわけです。そして2025年には、初めて会社からも休職と言う形で離れ、新しいチャレンジをしています。

肩書きを手放す経験と、会社そのものをいったん手放す経験…。この決断の背景には、ニューホライズンコレクティブとの出会いがあった。延友氏は2023年頃からメンバーとして参加し、そこで多くの刺激を受けたという。

脱サラして、セカンドキャリアで自分の好きなことをやって輝いてる方々が、LSPにはたくさんいらっしゃるのです。メンバーの方々に感銘を受け、影響を受けているうちに…、私もジャンプしてみたくなりました。

LSPに加入すると…ウエルカムミートアップイベントの際にひとり一人、こんなポスターを制作してくれるので、初対面の方との話が弾みます。

実は延友氏は、キャリアコンサルタントとしてこの仕組みを社内に導入しようと動いていた時期があった。しかし人事局から異動することとなり、社内制度としての実現は叶わなかった。それでも延友氏は、個人会員として関わり続けることを選んだ。その選択が、後の休職という決断を静かに後押ししていくことになる。

休職にあたり、2年以内であれば復帰できるという権利を保持しながら、その間にいくつもの新たなトライアルをしている。東京音楽大学の理事、ニューホライズンコレクティブとのパートナーシップ、スタートアップのサポートなど、活動は多岐にわたる。

私はこれまでのサラリーマン生活で、請求書一枚、書いたことなかったのです。自分のサービスの値段も知らなかったのです。ですから何もかも手探りでした。


やりたいことが明確に定まっているわけではない。むしろ、自分自身の"ソーシャルインパクトを一番発揮できる領域"がどこにあるのかを探るための、意図的な模索の時間として、この期間を捉えている。

役割の鎧を脱ぎ捨て、自らの内面と向き合うサナギの時間

イベント当日、北野氏のレクチャーの中で延友氏が最も印象に残ったのは、「実は期」という言葉だった。

会社の役割の鎧を脱いで…一人の自分自身になった時に、その心の奥底から沸き起こる気持ちに正直になれたのです。最初は喪失感があるのですが、しばらくすると…『実は』こういうことやりたかった、みたいな気持ちが浮かんできて…。

延友氏は自身の状態を、青虫が蛹(サナギ)になり、蝶になる過程になぞらえる。

人間の発達段階にもサナギの時期があると思うのです。この時期の葛藤こそが、実は非常に重要な意味を持っていることに気づきました。サナギって暗いし狭いし身動きが取れないし…先が見えない中でジタバタしてるうちに確実に変化していくんです。それでほら、あるときパリっと裂け目ができて一枚皮を脱ぎ捨てて『あ、蝶になっていた』みたいなことが起こりますよね。


暗く、身動きが取れず、孤独に感じられるサナギの時期。しかしそれこそが必要な過程であり、そこから逃げずに動き続けることで、確実に変化は起きる――延友氏はそう語る。

この視点は、彼女がこのイベントを女性向けに企画した理由にもつながっている。

人生100年時代、男性よりも寿命が長い女性こそ、セカンドキャリアをどう生きていきたいか、じっくり考える時期が必要だと思っています。自分自身のキャリアを自ら創造しながら、人生後半戦も輝き続ける方々を増やしたい…。特に女性は、サラリーマンを卒業してからが長いのです。これまでのキャリアを生かしつつ、全然違うことに挑戦している方が、LSPにはたくさんいらっしゃいます。本当にやりたいことにチャレンジしていると、誰かが力を貸してくれたり、不思議なことに運が開けているように見えます。ここには自己実現のための仲間と学びと出番があり、成功も失敗経験も分かち合いながら支えあっています。

セカンドキャリアへの移行に迷い、モヤモヤを抱えたまま日々を過ごす女性たちに、まずは立ち止まって考えるきっかけを届けたい。それが、延友氏の企画意図だった。

サナギの状態から逃げずに、大いに悩むべし

イベント参加者に、このクロストークがどんな影響を与えたと感じているか。延友氏の答えは意外なほど率直だった。

イベントに参加したからと言って、すぐに視界が開けたとか、スッキリしたという即効性はないと思うのです。

その代わりに彼女が語ったのは、コーチングの資格を取得した際に学んだ、ある視点だった。

コーチングのセッションを終えて、クライアントがどんな状況になってるのかがベストなのかをトップコーチに伺ってみたところ、『スッキリした、霧が晴れました』という回答ではなく、意外にも『Aかな、Bかな、やっぱりCかな、う~ん…』と、葛藤している状況なのだと。

答えが出ないまま揺れ続けモヤモヤすることこそが、成長に繋がる…。

だから、サナギの状態から逃げずに、大いに悩み、葛藤したほうが良いのです。


延友氏の物語が示しているのは、キャリアブレイクが「会社から離れる」という一度きりの転機ではなく、肩書きを手放す経験、会社を離れる経験…と、幾度となく形を変えて訪れうるものだということだ。そして今回のイベントのように、ミドルシニア個人が抱えるモヤモヤを、越境的な場で、様々な視点を得ながら成長へと導くコミュニティーラーニングの場づくりは、業界を超えて求められている。

2026年09月17日

PARTNER

ライフシフトプラットフォーム

ライフシフトプラットフォーム

延友陽子さん

在京キー局(休職中)/東京音楽大学理事/アナウンサー/キャリアコンサルタント。1998年、在京キー局に入社。天気予報・ニュース・スポーツ実況などを担当し、アナウンサーとして22年間、報道・情報の最前線に立ち続ける。その後、スポーツ局プロデューサー、人事部門でミドル・シニア世代の活性化施策に携わり、報道部門を経て、2025年6月より休職。現在はキャリアコンサルタントとして「人と組織がともに輝く未来」の実現を追求しながら、東京音楽大学非常勤理事として学生のキャリア支援や音楽を通じた価値創造にも取り組んでいる。ライフシフトプラットフォーム(LSP)2期生。

WRITER

北野 貴大

北野 貴大

代表理事 / 一般社団法人キャリアブレイク研究所

2014年にJR西日本グループに新卒で入社し、都市開発に従事。妻のキャリアブレイクをきっかけに、キャリアブレイク中の人のための宿「OKAYU HOTEL」を2021年にスタート(現在は奈良で運営中)。退職後、一般社団法人キャリアブレイク研究所を理事2人と共に2022年に設立。2023年より、大阪公立大学大学院経営学研究科付属イノベーティブシティ大阪ラボ特別研究員。

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