むしょく大学とやさしいビジネススクールの提携──76名の参加とブランディングの副産物

2026年6月、キャリアブレイク研究所が運営するコミュニティ「むしょく大学」と、オンライン経営学スクール「やさしいビジネススクール(以下、やさビ)」が業務提携した。むしょく大学メンバーは、やさビが持つ1,000以上の講義を無償で受講できるようになった。

離職・休職中の人と、経営学。一見、遠いふたつが結びついた背景には、担当者ひとりの「面白そう」という直感があった。仕掛け人であるやさビ・山下さんに、提携の始まりから、いま起きている現場の変化までを聞いた。
きっかけは「ただ知りたかった」
そもそもの出会いは、提携の話ですらなかった。
共通の知人である司法書士の方に誘われて、山下さんはキャリアブレイクの勉強会に参加した。キャリアコンサルタントも多く集まる場だった。
キャリアブレイクという言葉自体は知っていましたし、記事なども多少読んでいました。でも、そこまで詳しくは知らなかった。お誘いいただいたので、ピュアに『機会があるなら行ってみよう』というくらいの気持ちでした。
その場で感じたのは、キャリアブレイクという考え方の「押し付けがましくなさ」だったという。
もちろん万能な処方箋だとは思っていません。ただ、こういう考え方をまず知っておくのは、それ自体がいいことだと思ったんです。メンタルヘルスや、離職といった現実に起きていることと、どこかリンクさせられるんじゃないかと。
自分の中の「引き出し」が増える。困ったときに使える視点が増える。それは仕事でも、家族とのコミュニケーションでも同じだと山下さんは言う。この時点では、まだ連携という発想はなかった。
「一番遠いものが面白い」という直感
勉強会から提携を思いつくまで、およそ1ヶ月かかったという。
記憶に残るセミナーではあったんです。『北野さんの考え方、いいな』とずっと思っていて。そこから、むしょく大学がどんな活動をしているのかを改めて調べたりして。直感的に、『ここの人たちがうちのコンテンツで学んでくれたら面白いな』と思ったのが、率直なところです。
山下さん自身は、無職(離職・休職)と経営学は本来「かなり遠い位置にある」と捉えていた。やさビ学長の中川功一さんに話すと「リスキリングという意味では全然遠くない」と返されたというが、それでも山下さんの中では、距離のある組み合わせに映っていたという。
でも、一番遠そうなものが交わるっていうのは面白いなと思って。北野さん勉強会の中で『面白がることが重要だ』とおっしゃっていたので、それなら積極的に面白いものを持っていこうと思ったんです。
有益さについても、山下さんなりの見立てがあった。
キャリアブレイク中の方は、いずれ仕事に戻るのか、就職するのか、あるいは起業するのか、何かしらの選択肢を持つタイミングが来る。そのときに知識や知恵は必要になるはずだと思ったんです。コンテンツをきっかけに人と話す、他の人の考えを見ながら自分はどう思うかを考える時間も、有意義なものになるだろうと。
想定より速く、想定より熱かった
提携開始時、むしょく大学の登録者数はおよそ2,700名。そのうち、やさビに登録したのは76名、むしょく大学のSlackの中に作ったやさビのチャンネルで活動しているのは41名(取材時点)今も、1日1人くらいのペースでは増えているという。
何人か積極的な人がいて、その人がいろんな人を巻き込んで会を開いたりする状態には、3ヶ月から半年くらいかかるかな~と思っていたんです。それが、意外と2ヶ月くらいでできてしまって。
象徴的なのが、あるメンバーの存在だ。まっくすさんと山下さんが行ったオリエンテーションのアーカイブを見て興味を持ったという。そのアーカイブの中で、人間関係の悩みについての質問に山下さんが答えたことが印象に残り、それがきっかけとなり、やさしいビジネススクールにハマったそうだ。その方も含め、2か月足らずで、10名近いメンバーと会ってる。

オリエンテーションのとき、人間関係の悩みについて質問がありました。そのとき、たった1つ人間関係でうまくいかないことがあっても、それが他の人間関係もうまくいかないことの証明にはならないから、切り離して考えてはどうですか、というアドバイスをしたんです。それがすごく良かったと言ってもらえて。興味を持ってくれたみたいでした。
経営学を始めとした学問というものは、俯瞰的な視点をくれる。それがキャリアブレイク中の人にとって良いのかもしれない。
これまで見た誰よりも積極的に学んでいる
もうひとつ、山下さんが率直に「発見だった」と語るのは、むしょく大学メンバーの学び方そのものだった。
キャリアブレイクという言葉や実態はなんとなく把握していたが、まさに最中の人と触れ合うのは初めてだった。どんなもんだろうと思っていたが、むしょく大学のSlackチャンネルの盛り上がり方は想像以上だったそう。
一人だけじゃなく、結構みんながコメントしてくれるんです。『こういうことを学んだ』『こう考えた』と。すごく学ぶんだなと思って。時間があるからということもあるかもしれませんが、仕事をしているビジネスパーソンの会員さんより、アウトプットの量も、まとめ方の丁寧さも上回っている感覚があります。

使い方についても、山下さんの理想に近い動きが出てきている。YouTubeライブのアーカイブを使って、むしょく大学メンバー同士で「一緒にワークをやってみませんか」という動きが自然発生的に生まれたのだ。

これ、めちゃくちゃいい使い方だと思っています。やさビはスクールという名前がついている分、講師と受講生という関係性がどうしても強くなりがちです。でも私たちがやりたいのは、素材を渡して、それをどう使うかを自分たちで考えてもらうこと。それが自発的に出てきたのは、本当に嬉しかったです。
8月に予定している「報連相の基礎」をテーマにした講座も、事前の質問欄への反応が良く、期待の声が集まっているという。
『何をやってもダメだったけど、これでもう一度やってみたい』というコメントもあって。人生の悩みを経営学が解決してくれるかもしれない、という期待に応えないといけないなと思っています。
気づかされた、ブランディングという副産物
連携をしてみて気付いたこともあるという。それは、この連携が外からどう見えているのか、というポイントだった。
やさビは元々、ビジネスを学ぶ・強化するための場として認知されてきた。しかし今回の提携によって、キャリアブレイク中の人が「人生の転機を支えるもの」としてやさビを使っている実態が、外から見える形になった。それ自体が、ビジネススクールの新しいあり方になり得るのではないか、という視点だった。もしかしたらこの活動がブランディングにもつながるのかもしれない。
本当に人生の転機を支えるものになれていると胸を張って言うのは難しいが、こうやってみんなが人生の転機をつくるために使ってくれているのは事実。やさビ自体がそういう存在になれていくのだとしたら、これほど嬉しいことはないと思います。
ビジネススクールが「誰かの人生の転機を支える場」として認識される。提携前から本質的にはそうだったのかもしれないが、それが見える形になったのは、むしょく大学との接続があってこそだった。
2026年08月19日
PARTNER

やさしいビジネススクール
山下 浩輝さん
同志社大学大学院 生命医科学研究科修了(理学修士)。2018年、コンサルティング会社に新卒入社し、業種業界を問わず5〜100名規模の中小企業の経営支援に従事。2021年に個人事業主として独立し、さまざまなコミュニティに参画しながら学びと仕事を結びつけるキャリアを形成。2024年より、やさしいビジネススクールの学修コンシェルジュとして受講者の学修サポートに従事し、1on1面談を担当。現在、法人の研修企画・プロジェクトマネジメント、一部科目で講師も務めるなど、幅広く活動している。2025年より、同志社大学大学院総合政策科学研究科に在籍し、コミュニティでの学びに関する研究も行っている。国家資格キャリアコンサルタント、リスキリングキャリアコンサルタント。
WRITER

北野 貴大
代表理事 / 一般社団法人キャリアブレイク研究所
2014年にJR西日本グループに新卒で入社し、都市開発に従事。妻のキャリアブレイクをきっかけに、キャリアブレイク中の人のための宿「OKAYU HOTEL」を2021年にスタート(現在は奈良で運営中)。退職後、一般社団法人キャリアブレイク研究所を理事2人と共に2022年に設立。2023年より、大阪公立大学大学院経営学研究科付属イノベーティブシティ大阪ラボ特別研究員。
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